世界各地で取材を続ける海外特派員。現場で感じたことや考えたことを伝えます。
バイデン前米大統領が2021年6月に英国であった主要7カ国首脳会議(G7サミット)に出席した時のことだ。多国間協調を軽んじたトランプ大統領の1期目(17~21年)を念頭に、「米国が戻ってきた」と言うと、フランスのマクロン大統領が「いつまでそれは続くのだ」とやゆしたという。
疑問視されている米国の国際社会でのリーダーシップを自身が回復させる――。バイデン氏がそんな決意を語る際によく話したエピソードだ。ワシントンに赴任していた当時、よく聞いた。
そのマクロン氏が議長を務めたG7サミットが26年6月、フランス東部エビアンであり、現地で取材した。米・イスラエルの対イラン軍事作戦を巡って欧米の亀裂が深まる中、事前に注目されたのは、「トランプ氏はサミットに来るのか」「最後まで参加するのか」だった。トランプ氏の動向ばかりに焦点があたる異様な状況だった。
期待は低かったが、成果はあった。ロシアの侵攻が続くウクライナへの支援で結束を確認し、対露制裁の強化や長距離攻撃能力を持つ兵器の供与拡大で一致した。ロシア寄りの立場をとることもあるトランプ氏が賛同する形でG7としてのメッセージを出すことができた。
直前に米国とイランが戦闘終結に向けた覚書に合意したことで、トランプ氏が上機嫌だったのが幸いした。首脳らは合意を歓迎し、トランプ氏の気分を害さないように細心の注意を払っていた。閉幕後にトランプ氏をベルサイユ宮殿へ招待するなどの演出をこらしたマクロン氏の手腕もあるだろう。
トランプ氏の顔色ばかりをうかがうサミットの存在価値を疑問視する声もある。ただ、中国やロシアへの融和姿勢や単独行動主義が目立つトランプ氏が率いる米国を、民主的な価値観を共有するG7の枠組みにつなぎ留めておく意味は大きいと感じた。
27年は米国が議長国だ。トランプ氏の1期目の20年も米国が議長国だったが、新型コロナウイルス感染拡大でサミットの通常開催は見送られた。議長国は議題設定や招待国の選定などを主導する。トランプ議長はサミットをどう取り仕切るのか。毎年その価値を問われるサミットだが、来年はまさに正念場を迎える。